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──真っ暗。
いや、漆黒と言った方が正しいか、少女は明かりもない黒で統一された個室で一人呟いた。
「全てはブローチが指し示すであろう……って中二病かよ」
普通ならばこんな闇しかない部屋では手紙なぞ読むのは不可能であろう、しかし少女──黒崎 梨乃にはそれが可能であった。
職業柄、はたまた生活柄明るいところより暗いところの方が多くの時間を過ごして居るためか、下手すれば普段表にいる時の方が視力が弱い。
しかし昼間の欠陥は特に問題にはならなかった。
何故なら彼女は──
「でも、まぁ……烏の中にも他に手紙が届いた奴が居るみたいだし」
──烏という裏組織に加入、弱冠14歳ながらその腕は大人に勝るとも劣らず……生まれたときから育てられた『殺し』のプロだ。
「学園都市Arkってのにも興味あるし行ってみるか」
そして梨乃は同封されていた黒い箱を手に取ると、迷うことなく蓋を開いた。
「──っ、何!?」
その瞬間、突如膨大な光が梨乃を包んだ。
今まで見たこともない筈の土地が人が声が、まるで映画でも観てるように流れ込んできた。
寂れた町を走り回る少年少女、いつでもどんなときでも笑顔を崩さない少年、やがて大人になり町は……国は崩れ彼らは──。
しかしその映像はあまりにも早回り過ぎて、理解がついて行かない。
けれど何故か懐かしくて、不思議と涙が溢れた。
「……んだコレ」
こんな場所は知らない、梨乃は今ここにいる。
だが、記憶の中の少女は、最後に泣き叫んでいた少女は、梨乃そのものだった。
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