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更に増えた新規立ち上げのための俺のチームメンバーは、今のところ営業の俺と、技術職の2名と少なかったが、日本語で気兼ねなく会話を出来る相手がいると思うと、幾分か気持ちがほぐれた。
「これ俺の息子くん」
そういい、先月生まれたばかりの赤ん坊の写真を見せる松岡さんが、嬉しそうにスマートフォンの画像を此方へと向けた。
スライドされていく顔は、まだ肌が赤みを帯びていて、目は糸のように細かった。
純白のレースに包まれて、愛おしそうに視線を送る母に抱かれ、こちらの画面をなんとも眩しい様子で見つめ返している。
「出産前にリヨン行きが決まってさ、
わが子の顔を見るまで待ってくれって会社にごねて、ごねて、
でも、受け入れられなくてさ。
出発の日の朝に嫁の陣痛が来ちゃって、
嫁が陣痛で苦しんでいる脇で、病院でスーツケース抱えて
飛行機の時間と睨めっこしながら、誕生の瞬間を待ちわびるとは、夢にも思わなかったよ」
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