Kiss 1. Le Petit Prince (星の王子様)

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PCの右下に小さくPOPUPされたお知らせメッセージ。 この時間に、SkyPeでの連絡が来るのは、珍しい。 緊張と、思いがけないプレゼントに、胸が沸きあがった。 大きく息を吸い、リクエストに答える。 小さくなっていた画面を広げると、直ぐにログイン済みの佐藤の顔が映し出された。 10月20日 23時55分 東京は10月21日午前6時55分  7時間の時差。 スーツを着ているところからして、仕事中だろう。 壁の柄に見覚えがあり、思わず噴出した。 「佐藤、いま会社のトイレ?」 「あ.....ばれてますね」 時折画面が歪むのは、佐藤の膝の上にパソコンが乗っているからだろう、 「こんな朝早くに会社?」 「昨日から残業で、まだ仕事終わってない」 「日曜出勤してたんだ」 「もう月曜日ですけどね。こっち(経理部)は忙しいみたいですよ」 溜め息混じりに肩を落とす佐藤と対面しようと、椅子に腰掛けて画面を覗き込んだ。 「へぇ、相変わらずこき使われているんだ、で、サボリですか?」 「ちょっとお先に私だけ休憩です。」 画面が縦にブレたあと、小声で佐藤が呟いた。 「それをサボりと呼ばずに何というんだ?」 いつもの如く、佐藤の言葉に突っ込みを入れたが、 佐藤は、なんだか落ち着かない様子だ。 「話があって…」 「だったら、LINEでもいいのに」 「あ! そっか! 忘れてた!」 「ばか?」 「馬鹿で結構です。 と、いうより、小栗、スマホの繋がり悪いんだもん。」 「そんなこと無いと思うけど?」 「いや、いーーーっつも誰かと繋がってるね」 佐藤が唇を尖らせた。 アプリコットのグロスの香りを想い出す。 アイツの匂いなんて漂うはず無いのに、記憶の底に残る香りが鼻腔をくすぐり始めた。 .
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