Kiss 1. Le Petit Prince (星の王子様)

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「あ、なんか怒って...る?」 「怒ってないよ、俺が佐藤を愛おしく思うときは、こういう顔になんの、 いい加減覚えろって」 俺の言葉に、目を大きく見開いた後、顔を背けて耳元のピアスを揺らした。 照れた様子で髪を掻きあげた際に、浮き上がった白い首筋に視線を奪われる。 髪の筋を撫でる佐藤の細い指先。 其の全ては俺のものなのに、触れられないもどかしさが、更なる言葉を押し出した。 「佐藤、俺のほう見て」 「え?」っと、 一瞬だけ画面へ視線を送った後、 画面を揺らして、 佐藤のおでこだけの画像になった。 佐藤の前髪の生え際に文句を言う。 「なんだそれ?、佐藤映ってないぞ」 「いや、なんとなく」 「なんとなく?」 「いや、ほんと、なんとなく、今は、ちょっと...」 「ちょっとって、なんだよ、」 「今は、小栗の顔見れないって言うか...」 「やましいことでもあるんでしょうか?佐藤舞。」 「あ!るわけないでしょ!」 画面いっぱいに佐藤が映り、 胸元まで赤く染めた佐藤が映し出された。 怒った様子だったが、それでも構わない。 四角い世界の中に居る、彼女に囁く。 「佐藤の顔、見てたいから、そのままでいて。」 「あ..........のねぇ.......」 言葉をぼそぼそと漏らしたが、全く聞こえなくって、でも文句ではなく、照れてるってことだけはわかった。 「てか残業してるんだろ?戻れ、もどれ、」 佐藤の慌てっぷりを堪能しながら冗談をいう。 「あ、」 思い出したように、視線を画面に向けて忙しく視線を泳がせ始め、それから黙り込むと、カメラを睨み始めた。 「.....なに?」 佐藤の思いがけない真剣な表情を見て、不安がよぎる。 ....もしかして、 別れたいとか言い出すのか? やっぱ、遠距離なんか無理とか? なんだよ....なんで、そんな顔すんだよ? .
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