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デスクに戻ると、
黒木 紫優(くろき・しゆう)ちゃんが声を掛けた。
ぱっつん前髪の奥から、
相変わらず、愛嬌のある大きな瞳がくりくりと私を愉しげに眺めた。
「会っちゃった?キツネリーダーに」
「しぃいいぃい。
やばいって紫優ちゃん、地獄耳だから聞こえちゃうよ」
指を立てて、彼女の言葉を遮る。
「舞ちゃんが戻ってこないからって、
探し回ってたよ。
もう、あの慌てっぷりって言ったら....」
くすくすと笑い声を上げる紫優ちゃんを隠すように両手を広げてみる。
「そして、見つけ出されてしまいました。
はぁ~、今日も残業だって~。幸先不安だよぉ」
「黒木!佐藤!!お前ら仕事終ったのか?」
「あ、はーい今から頑張りマース」
紫優ちゃんが、可愛らしく応えると、
「佐藤!次ぎサボってんの見つけたら、
てめぇ、殺すぞ!」
と、パワハラ最大の暴言であろう、激励がリーダーから戻ってきた。
汗だくの私の肩を彼女が優しく撫で、
「ファイト!おぅ~」
苛立っている彼のデスクから見えないように隠れて、
二人で気合を入れ直した後、仕事に取り掛かった。
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