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手首を掴まれ、ぎょっとして振り返ると
ずらした眼鏡の下から、
きりりと鋭い眼光が睨みを利かせていた。
「なんですか?」
「せっかくだし、
仕事任せていい?」
「いや!帰りたいです!
もう24時間耐久ファンデの限界を既に超えてます!!」
「...お前の顔なんか誰も気にしてないから」
「うっっ!!!!」
グサリと刺さるひと言に、死亡寸前の私の腕を引っ張り、
経理部のドアを鬼上司が目指した。
「てめ、自分で歩け!!」
急に腕を振り払われ、つんのめりながらも
長い足が、さっさと廊下を進んでいくのをほぼ小走りで追いかけた。
気づくと、経理部の資料室の前に居た。
扉を開けた途端に、冷たい空気と、インクと、古紙の匂いが漂った。
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