Kiss 1. Le Petit Prince (星の王子様)

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手首を掴まれ、ぎょっとして振り返ると ずらした眼鏡の下から、 きりりと鋭い眼光が睨みを利かせていた。 「なんですか?」 「せっかくだし、 仕事任せていい?」 「いや!帰りたいです! もう24時間耐久ファンデの限界を既に超えてます!!」 「...お前の顔なんか誰も気にしてないから」 「うっっ!!!!」 グサリと刺さるひと言に、死亡寸前の私の腕を引っ張り、 経理部のドアを鬼上司が目指した。 「てめ、自分で歩け!!」 急に腕を振り払われ、つんのめりながらも 長い足が、さっさと廊下を進んでいくのをほぼ小走りで追いかけた。 気づくと、経理部の資料室の前に居た。 扉を開けた途端に、冷たい空気と、インクと、古紙の匂いが漂った。
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