Kiss 1. Le Petit Prince (星の王子様)

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その瞬間、 パワハラ=依願退職願いの 白い紙に書かれた筆文字が頭に浮かび、 深々と頭を下げた。 「...ご.ごめんなさぁ~い!!言い過ぎました!!」 謝罪を述べたが、沈黙は続いたままだ。 被さった前髪の隙間から上司の冷酷な表情を盗み見る。 相変わらず、つんと尖った三角の瞳が眼鏡の奥から覗いていた。 「......今日は此処で終わり。」 「え?」 「もう帰っていい。」 ええ?そんなにグサリとするひと言を言っちゃったってこと??? 泣きべそをかきそうになりつつも、顔を上げた。 「まだ、1年分も終ってませんが? 頑張りますんでやらせてください!」 「1時間経った。」 「へ?」 時計を指差しこの資料室へ来てから1時間が経過していたことを告げた。 「お前が、サボった時間分消化させただけだ。 これ以上残っても仕方が無いだろ、 今日は帰れよ。彼氏が待ってんだろ?」 ....待ってないですが...... 思わぬ言葉を受けて、目を瞬いていると、 「しっし」 掌を振り、追い出そうとする上司が、 もう話は無いとでも言うように、 資料室の奥へと進むところだった。 その背中に再度尋ねる。 「いいんですか?本当に帰りますけど!」 「今日だけだぞ、あ、残業つけるなよ?ペナルティなんだから。」 「....うっ...ハイ。」 細かい指摘を入れた上司に、心の中で舌打ちをする。 「あ....今、俺のこと、ケチだと思っただろ?」 「おも、...ってなんか..、」 心の中を覗かれ、慌てふためいた。 「正直に言えよ、」 「...ちょっとだけ...思いました。」 溜め息混じりに正直に告げる。すると、なにやら嬉しそうに微笑み 掌を軽くひらつかせて外へ出るようにと即した。 「褒め言葉をどうも。気をつけて帰れよ。」 「...はい。お先失礼します。」 いつもは見せない笑顔に困惑しつつ、 ぺこりと頭を下げて部屋を出た。
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