Winter Lovers

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「意味ねえ」 「そう? でも兼六園は見れたよ」 兼六園見に来たわけじゃないだろ、っての。 「うち泊まってく? 明日帰れば?」 「ダメ。明日は早川とデート」 うわムカツク。寝不足でへろへろで振られちまえ。 「何、お前、惚気に来たの?」 「そんな暇じゃねえよ」 丁度、席にあったかい蕎麦がふたつ持って来られて、月征は陽向に一本割り箸を渡して、自分の分をまっぷたつに割く。 蕎麦を食べて、少し店で話しこんでたら、もう月征は帰る時間だと立ち上がる。ほぼトンボ帰り。そこまでしてここに来た月征の真意が陽向にはよくわからない。 送っていった夜行バスの乗り合い所は、ごった返してた。大阪、東京、名古屋。行き先は多岐に渡るが、若い人のひとり旅が多そうだ。 「混んでるな」 人混みの嫌いな月征が、うんざりしたように言う。 「明日イブだからな~。いいじゃん、お前は帰って直ちゃんとデートでしょ?」 「ああ、そうだ。お前にプレゼント持ってきたぜ?」 「えっ」 ビミョーに嬉しくない。複雑な表情の陽向に月征はからかうように。 「俺からじゃねえよ」 毒づいて、リュックから小ぶりの紙袋を出した。 「誰から?」 抑えようと思っても、期待に胸が震えてしまう。ドキドキしながら、月征から紙袋を受け取った。 「羽田」 うわうわうわ。どうしよう。 リボンのかかった茶色い箱の蓋を開けると、プレーンとチョコのクッキーが入ってる。素朴なラッピングとシンプルな中身はおそらく詩信の手作りだろう。そして…。 元はハート型だと思われるクッキーはどれもこれも全部割れていた。
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