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(昨夜の電話では、一言もそんなこと言ってなかったのに)
朝いちで、目の前に届けられた箱を、詩信はじっと見つめる。透視能力なんてないから、中身はわからないけど、でも。
今日が24日なのだから、おそらくクリスマスプレゼントなのだろう。
(直接会って渡したかった…)
悔しさともやもやを抱きながら、作ったークッキーは、敢えてハートの形を崩して焼いた。ある種の嫌がらせ。でも、わかってほしい。なんとも思ってない人に、女はそんなことしない。
昨日の電話で、陽向は怒るどころか、喜んでた。美味しくてパクパク食べた、とも言っていた。
その電話から8時間後、詩信の手元に届いた小包。恐らくは、詩信のプレゼントを受け取る前に、出したものだと思うのだが。
あたしに受け取る権利あるのかな。ひなちゃんの気持ち…。
躊躇いながら封を切る。
箱の中にショップのビニル袋。更にその中に、紙の箱、そして白い紙に丁寧に包まれた手袋が入っていた。
(…可愛い)
真っ白い手袋で、手首のところに金具のリボンがついてる。嵌めてみると、大きさはぴったりだった。
仕事の時間かな。お礼を電話で言うか、メールでするか迷っていたら、着信があった。掛けようと思った相手からの電話で、詩信は左手に手袋をしたまま、電話に出た。
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