Winter Lovers

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「ひ、ひなちゃん。プレゼント、ありがと」 陽向の声が聞こえる前にそう言った。素直に素直に。呪文みたいに唱えてから。 「あ、うん。気に入ってくれた?」 「うん。可愛い。サイズもピッタリ」 「良かった。ホントは会って渡したかったけど…ごめんね」 あたしも会いたかった。詩信がそう思う男なんて、この世できっと彼だけだ。 「しーちゃん」 陽向の声が、急に硬くなった。電波越しにも伝わる緊張に、詩信も思わず背筋を伸ばす。 「正月にはそっち行くつもりだから…その時は、手袋してきて」 「? いい、けど…」 嵌めたところ見てみたいのかな。陽向のリクエストに、詩信は首をかしげながら頷く。 「俺もしてくから。そしたら…手つないで、歩きたい」 「ひなちゃん…」 「俺、しーちゃんが好きだよ。世界中でいちばん大切。もっと近づきたいし、もっと触れたい」 「ひな、ちゃん…」 ぽたりと、涙の雫が落ちた。 好き、という気持ちと、怖い、という気持ち。相反するふたつの思いが、詩信の中にずっと存在してる。未だに過去を乗り越えていない自分が、誰かを好きになるなんて、あってはいけないと、詩信はずっと自戒していた。 それなのに、陽向は共に歩きたいと言ってくれる。手袋越しでいいから、触れたいと望んでくれる。 詩信の恐怖ごと包んでくれそうな、この人に、甘えてしまってもいいのだろうか。
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