Winter Lovers

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◇◆◇◆◇ 待ち合わせ場所には既にいたけれど、月征は少し眠そうだった。 「おはよ」 と張りのない声で言ってから、「ごめん、眠くて」と眼鏡を外して、手の甲で目をこする。うわ、無防備なそんな仕草、初めて見たかも。無理もないかあ。夜行のバスで朝帰って来たんだもんね。 「動物園のパンダでも観察するような目で見ないでよ」 「す、すみません…陽向先輩、元気でした?」 「ん、ああ。元気だったよ」 (なら良かった) 正直そこまで無理して、親友に会いに行く月征の行動は直には不可解だ。でも、他の相手ならいざしらず、陽向が相手なら、張り合ったり拗ねても仕方ない気がする。 恋心は消えたとしても、やっぱり月征にとって陽向は特別な存在なんだろうし、その繋がりを断ち切ろうとも断ち切れるとも思わない。 「あ、そういえば月征先輩」 ずっと気になってた詩信のクッキーの行方を聞こうとしたら、丁度直のスマホにメールが届いた。 「……」 「羽田じゃない?」 確信ありげに月征が言う。開いてみると、確かに詩信からのもので、しかも内容に直はメールを2度見してしまった。これってこれって…そういう意味だよね。思わず、月征の方を見ると、彼は彼で自分のスマホを取り出した。
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