Winter Lovers

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「俺のとこには、10分前に陽向からメール来たんだよね」 と見せてくれた中身は、詩信のものと同じ事実を告げているのだが、画面から伝わるテンションがまるで違う。陽向のは歓喜に満ちてるし、詩信の方は、何処かこの展開に戸惑いも感じてるような。 並べた画面を見比べて、直はぽつりと呟く。 「陽向先輩と詩信、付き合うことになったんですね…」 「みたいだな…」 びっくりだ。勿論いい意味での驚きだけど。 「クリスマスですね」 難しいんじゃないかと思われた親友の恋の成就は、この特別な季節の盛り上がりが演出してくれた奇跡に思えた。 「うん」 「あ、先輩、私も作ったんです。クッキー」 友達と一緒に、彼に渡すお菓子作り。そんな女の子チックなことは、生まれて初めてやった直だった。自分は不器用だし、そもそも月征は甘いの嫌いだから、と散々尻込みしていたが、結局その場の空気に流された。講師になってくれた詩信の母は、手作りのお菓子を作り慣れてるらしく、直も初めてにしては、まあまあの出来になったと、自分では思ってるのだが。 詩信と色違いの紙袋を渡すと、とろんとしてた月征の瞳が見開かれた。 「く、クリスマスプレゼント…。あ、でも、私のは割れてないし、砂糖も控えめにしましたから」 「ありがと」 月征は笑顔で受け取ってから、近くのベンチを指差す。 「あそこで食べる?」
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