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「や、あのっ。出来たら、ご自宅でひとりで召し上がって頂きたいというか、何というか…」
「え、何で」
「は、恥ずかしいから? それにおいしくなかったら」
その反応は見たくない。
「ほら、おいでって」
直の言い訳はまるっと無視されて、月征は先ほど自分でさしたベンチに、直を引っ張っていく。
「月征先輩ゴーイン…」
直がじとっと横目で見ても、臆することなく月征は箱を開ける。
「食べる?」
「散々味見したんでいいです…」
というか焦げてしまったり、形が悪かったり。製造過程ではねられたクッキーは全部、直の胃袋に収まった。
「そうなんだ」
月征は無造作にクッキーを口の中に放り込んで、満足そうに「ん、美味しい」と呟いた。その後も。
(先輩甘いの嫌いだったんじゃ…)
直が不思議がる勢いで、パクついてる。半分くらい無くなったところで、蓋を閉める。
「美味しかった、ありがと。早川」
親指で唇を拭う仕草まで、直は釘付けだ。
「あ、俺からも」
お返しとばかりに、今度は月征がベンチの脇に置いてたバッグから箱を取り出した。
「へ?」
「クリスマスプレゼント」
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