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赤い包装紙に十字に掛けられた緑のリボン。いかにもクリスマスカラーの箱は、直の手のひらくらいのサイズだ。
「開けていいですか?」
「どうぞ」
逸る気持ちで、震える手でリボンを解き、包みを開くと、出てきたのは細いチェーンでトップにハートが3連でついたネックレスだった。
「可愛い…つけていいですか?」
「早川ひとりで出来るの?」
「出来ますっ」
まるで子ども扱いの月征に反抗して、向きになって言い返す。けれど、華奢なネックレスの留め金は、後ろ手ではなかなか嵌ってくれなかった。
「貸してごらん」
痺れを切らしたように月征に言われて、直はしぶしぶそれを渡す。
「早川。こういうのホント下手な」
「ほっといてください」
「動くな、って」
だって。ちりちりと項を滑るチェーンの感触も、じかに感じる月征の呼吸も。くすぐったくて、ドキドキする。
「出来たよ」
月征に言われて、ハートのトップに触れる。直の着てるチェックのシャツの中、ちょうど鎖骨の下あたりにぶら下がって、位置も大きさもいい感じだ。
「ありがとうございます」
「どういたしまして」
型通りの他人行儀な言葉を交わし合ってから、月征はまだ手を掛けたままだった直の首筋をぎゅっと自分の側に寄せる。
(あ、久しぶりにキスしてくれるかな…)
高鳴る期待に直は、そっと瞼を降ろす。けれど、彼の唇は直の思いもしない箇所に落とされた。
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