Winter Lovers

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「月征先輩…?」 月征の行動を不審に思った直も、前方を見る。そして直たちを振り返った一対の男女の姿に、お互い「あ~~~~~っ」と叫び声を上げた。 「偶然だねえ。覚えてるよ、君たち。直ちゃん詩信ちゃん陽向くん月征くん――だったよね」 お、流石やりての営業マン。淀みなく名を呼ばれ、月征は彼の記憶力に舌を巻いた。偶然というには余りにも出来過ぎな再会。月征の方も、彼と彼女のことは覚えてる。桐生大志と綾。従兄弟同士の恋人同士――だった筈だ。 「偶然てあるものなんですねえ」 参拝を済ませ、境内の大きな樹の下で、陽向もこの意外な再会に目を細めた。 「相変わらず仲良しなんだね」 紙コップのコーヒーを啜りながら、大志がぐるりと4人を見回す。 「いやあ、そちらほどでもないですよ。ってか、もしかして…?」 陽向は彼の紙コップを支える薬指に光るものを、指差してにやりと笑う。 「あ、やばい、気づかれちゃった。そうなのよ、俺と綾、晴れて結婚しました~」 何の衒いもなく言って、大志は綾の肩を抱き寄せる。彼女の方が、面食らった表情になった。 「ちょ、お兄ちゃん…」 「あ、でもお兄ちゃん呼び健在だっ」 「あったりまえじゃん。俺は綾のお兄ちゃんで恋人で夫なんだから」 「欲張りですね…」 「君らの方は?」 ぱっと振られて、如才なく流せるほどこっちはオトナじゃない。直と詩信は露骨に赤面して、月征と陽向は照れ隠しみたいにそれぞれ旋毛と頬をポリポリかいた。
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