628人が本棚に入れています
本棚に追加
/625ページ
朝まだ日が昇り切る前に出発したのに、金沢についた時にはもう昼を回っていた。うーん、流石に腰が痛い。運転疲れの月征と違って、金沢の駅で4人を待ち受けてた陽向は超元気だった。
「ひっさしぶり、しーちゃん、直ちゃん、月征っ。遠路はるばるごくろーさまっ」
そう言って、陽向が乗り込んでくるのは助手席だ…いや、もう何も言うまい。
「海行くだろ、海っ」
「もう午後だろ? 明日のがいいんじゃないか…?」
「だめだめ、明日降水確率60%っ」
「はいはい」
諦めて、月征はナビの目的地を最寄りの海水浴場に変更した。
夏の日差しは強烈だが、海の色は太平洋側と日本海側では違って見えた。日本海は色が濃く深く、そして波は荒い。
金沢で陽向と合流して、4人で海に来たのだ。
水着に着替え、白い砂浜に立って、直のテンションは否応なしに上がる。
「わあ、月征先輩、海ですよ海っ。すごーい」
まるで子どもみたいに海を見てはしゃいでから、月征を振り返った直は、「きゃ…っ」と小さく叫んで、すぐに目線をそらして俯いた。
(ど、ど、どうしよ…。当たり前なんだけど、月征先輩も水着で、しかも上半身ハダカなんですけどーっ)
「きゃって、何だよ」
「だ、だ、だって…っ。先輩の肩とか胸板とか背中とかっ。まぶしすぎてまともに見れないです」
直は今にも鼻血を噴いて卒倒しそうな勢いだ。
「…お前、学校のプールとかどうしてんの」
「えー、俺なんて月征の全部見たことあるよお、直ちゃん」
「◯?※☆★?…」
「陽向っ」
誤解を招くようなこと言うなっつーの。合宿の銭湯とかの話だろ? ぶつぶつ文句を言いながら、仕方なく月征はTシャツを頭から被った。
最初のコメントを投稿しよう!