だって夏だもん

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「何で? 可愛いよ」 「でも」 もっと色っぽい大人っぽい水着が似合う容姿だったら。170センチ近い上背と真っ直ぐな身体は、高3になっても相変わらず女性らしい丸みに欠ける。 「はーやーかわ」 「ご、ごめんなさいっ」 「――直は女の子っぽいし、可愛いよ。それとも、俺ひとりの主観じゃ、足りない?」 足りない? そう聞く、月征は怒ってるというより、寂しそうだ。 好きな人に、好きと言って貰える――それが、どれだけ凄いことか、直は誰よりも知ってるはずなのに。 何千人、何万人の人に『男の子みたいだ』と思われても、自分の好きなたったひとりの目に、可愛く映ればそれでいいのに。 「た、足りてますっ。目一杯です」 慌てて答えると、月征は肩を震わせてる。あ、あれ? 「目一杯って…」 「せ、先輩、また私のことからかってるっ。わざと悲しげな顔したりしてひどいっ」 「からかってないからかってない」 目尻を指先でこすりながら、月征は答える。どうだか怪しいなあ。直は訝しげに、腕を組んで月征を見つめる。けれど、その腕はすぐに解かれてしまった。 ぐっと直の左の手首を、月征は引き寄せる。 「――泳ごっか」 「は、はいっ」 月征の言動に一喜一憂してしまう辺り、片想いの頃と何ら変わりない直だった。
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