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「は、はい、な、なんなりと」
気負い過ぎた直の返事がおかしいらしく、月征はくすくす笑う。
「そんな大層なもんじゃないんだけど…肩、貸して」
「え?」
意味を問う暇も『はい』と直が答える間も許さず、月征は直の肩にこてんと右の側頭部を乗せた。
「つ、月征先輩…っ」
予期せぬ接触に直の身体はぴきーんと固まってしまう。
「ごめん、ちょっとだけ寝かせて」
そういいながら、月征は瞼を閉じてしまう。直の肩にこぼれた前髪がくすぐったい。眼鏡のない素顔の寝顔が、露出された肩が鎖骨が直の間近にある。
(えーえー、どうしよ…っ)
肩こりしそうなくらい、かちこちに固まっていた直だったが、月征から寝息が聞こえてくると、次第に緊張や興奮も収まってきた。
(やっぱりカッコいいなあ。月征先輩…)
空は快晴で、波は穏やか。眼下の海は透明で澄み切っている。濡れた身体を風が優しく撫で、乾かしていく。
無防備な月征の寝顔を見ながら、幸せ気分に浸ってしまう直だった。
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