絆創膏のこと、サビオって言うよね?

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 心の傷は目に見える傷より治すのが困難だ。そう賢人は諭すばかりで立ち向かおうとはしなかった。そこにある困難に。 「だいたい怪我なんてものは当人が思っている以上に心配されないものなのさ。心配されないんだから、所詮その程度なんだよ」  彼は詩人であり医者であった。前者は他称、後者は自称の肩書である。”言葉は心の絆創膏になり得るのだから、この世に治せない怪我はない”というのが彼の掲げる金科玉条だ。そんな彼のところに今日も患者がやってきた。なんでも胸の奥がキリキリと痛むのだそう。  彼はそんな患者と暫し話す。カウンセリングとは名ばかりの詩的言葉の押し売りだと野次を投げられたこともあった。 「未だにキミは存命なのだからたいしたことはない。大丈夫さ」  はたして言葉は誰かの心を包めるのだろうか。
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