色盲の秀才

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 いつだって嫉妬が尊敬の邪魔をする。あいつと一緒に頑張って、あいつと一緒に取り組んで、なのにあいつと一緒に喜べない僕は……いったい誰だ?  時々自分が分からなくなる。まるで世界からすぅーっと存在が消えてなくなっていくような感覚。凡人は芥に紛れてどこ吹く風に攫われていくのだ。ふとそんな虚無感に憑りつかれては、いやいや頑張ることに意味はあるのだと自らへ言い聞かせ、なんとか自分の色を取り戻す。それが何色か見やらぬまま。  皆よく「天才」と「秀才」の区別をつけたがる。「天才」は先天的なものであり「秀才」は後天的なものだの云々。だけど僕からしてみれば過程にさほど意味はなく、ただ今そこにある結果だけが全てで。つまるところそういう冷静な客観視が自己矛盾に気づかせる。そう――過程にさほど意味はない。  あいつの周りは華やいでいた。彩り豊かな笑顔の花畑が出来上がる。赤白黄色、どの花見ても綺麗だな。  だれか僕に色をくれ。誰にもない、僕だけの色を。
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