例えば……

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「いや、君をゴーレムにするつもりなんてなかったさ、ただ、あの刀の毒素を取り除くことは不可能だったからね、ゴーレム精製の手順をふんでるとはいえ荒療治だった、そもそも、ゴーレムというのは、泥のこねくり回し、人型にすることから始めるんだ、生きた人間を、そのままゴーレムに作り上げるなんてね、一か八かの賭けだったけれど」 そこで、シィは言葉を区切って、表情を少し歪め下唇を噛み締めた、後悔はしていないだろう、嫌悪するような表情だった、出会ったばかりの相手であるいじょう、勝手な憶測になるけれど、それは不甲斐ない自分を責めてるようだった。 「今すぐに、現実を受け入れろとは、言わない、訊くんとの約束を守りたかったんだ」 シィは、俺をゴーレムに経緯を手短にしようとしていた、ゾンビである、ミィと最初に対面させて、そういう非現実的な物事があると認識させて、俺の身に起こった出来事を少しでもショックを軽減させようとしていた、シィの本心は違うかもしれないけれど、命の恩人で、ここしばらく、厄介になる相手に違いない、まだ、麻酔薬が効いているのか、感覚の曖昧な右足のこともある。 「助けてくれて、ありがとう」 とにかく、お礼を言った、ここで仲違いしていても仕方ないのだ、ゴーレムになった事実を受け入れたわけじゃないけれど、嘆いても始まらないだろう。
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