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無償という言葉は疑え、無料より安いものは無いと誰かが言っていた、シィにとっては俺の命なんて、道端に転がった、小石を拾うことと同じで捨てるのも持っていても、どっちでもいい、安い買い物でもした感覚なんだろう、その結果、ゴーレムになってしまったことに対する罵倒は覚悟していたけれど、お礼を言われるなんて思わなかったと、最初から助けるつもりなかった、俺が死にたくないと言ったから、治療したのだろう。
「わかった」
けれど、シィにどんな思惑があろうと、命の恩人には変わりない。
「わかったとは? 死ぬのかい? それとも……」
「言葉だけの感謝なんていらないだろ? 手伝うよ、お前の仕事」
欲しい物があるなら、対価を払う、世の中の常識だ、仮に見返りが無かったとしても、人間に戻れなくてもこのまま、死ぬよりましだ、あがいてやる。
「だからさ、教えてくれないか? シィ、お前は何者で あの刀は? あと、俺はもう一度、歩けるようになるのか? これだけ教えてくれ」
「全く、どいつもこいつも……いつだって」
シィは笑った、クックっと腹を抱え、コーヒーカップがカチカチと揺れた。
「なら、君は、名前を捨てるんだ、そう、貝塚訊という男は死んだ、もう、君は日常に戻れない、それも覚悟してるだろうね?」
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