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「訊!! しっかりしろ!! 正気を保て!!」
シィの声が嫌に遠く聞こえた、意識が刈り取られていく、鼓動だけが支配していき、剥ぎ取られた皮膚から泥のような物が身体を覆って固まっていき新しくつくられる、新しい身体、ゴーレムのような身体に変わって、喰われる、よくわからない、何かが喰い尽くしていく、鼓動がだんだん、強くなっていき。
『……来なさいな、こちら側に……』
『言葉』になって頭に溢れ、引っ張られる、女の声だ、澄んで通って浸透していく。
『……貴方には役不足、貴方には相応しくない、貴方にはこの世界は不釣り合いなのよ……』
ーーパンッ!! パンッ!!ーー
よじ登って乗りになった、シィの張り手が俺の頬ひっぱたいた、あの『言葉』は俺、以外に女の声は聞こえないらしい。
「シィ?」
朦朧とした意識の中で手繰るように、言う。
「よく聞くんだ、異能の力が君を浸食している」
「…………?」
一度、収まった鼓動がぶり返す、また、『言葉』になってき、頭の中に溢れた。
「喰われるな、喰い尽くしてしまえ、乗っ取られたらおしまいだぞ」
それよりも力強く、はっきりとシィの声が降り注ぐ。
「死にたくないのだろう? 生きたいのだろう? なら、足掻け、諦めるな!!」
「お兄ちゃん!!」
ミィがゾンビの馬鹿力で、
俺の手を握ぎる、みしみしと軋む、この痛みすらありがたい。
「……俺は、ウグゥ!! 」
ーードクンーードクンーー
さらに、強く、激しく、鼓動が高鳴り。
『……喰い尽くしてあげましょう……』
ブツンと、意識が刈り取られた。
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