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「あらあら、大きな穴が開きました、あちら側まではっきり見えます」
まるで、自慢するように少女が言った。
何十発、いや、数百発ともとれる拳の連打を腹部くらい続け、ものの見事に大穴が開いた、打撃と捕食を繰り返すだけの単調な作業はあまりにも悲惨な結果を残した、つまり、俺の腹部は殴りつけられ、抉り取られて喰われたのだ、下半身と上半身が繋がっていること自体、もう、奇跡だった、ただ、あと数発の拳を打ち込まれたら、そんな薄皮一枚で繋がった奇跡も打ち砕かれてしまう。
「…………」
痛みと苦しみで言葉が出て来ないけれど、少女をまっすぐ睨みつけた、俺の苦し紛れの反抗だった、もちろん、睨みつけたところで何も変わらない。
「そのような反抗的な態度でいられるなんて、貴方、マゾヒストなのかしら?」
少女は余裕に満ち溢れ、拳を振るう仕草をした、捕食行為には体力も同時に吸収する作用でもあるのか、疲れはうかがえない。
「それにしても、こんな状態になっても生きているなんて普通だったら死んでいたでしょうに、いえ、こんな状態になっても死ねないなんてなんて不幸なんでしょうと言い換えるべきなのかしら?」
「お前は、ずいぶんと人間らしくなったんじゃないか?」
皮肉混じりに声を絞り出す、この状況が変わらないなら、変わってしまうようなきっかけを作るしかない、そう、ほんの一瞬の逃げるためのきっかけを。
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