例えば……

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一人暮らしにも慣れ、ゆとりが出てきた頃、ひとえに暇潰しに小説執筆を初めたにも関わらず、ズルズルとやめ所を見つけられないまま、一種の趣味と化しつつあるのが現状だった。 だからといって、何かしらの賞に公募しているわけでもなく、趣味、日記代わりで永遠と書き綴る物語は俺、以外の目に触れることなく、箱に詰め込まれ押し入れの奥底に眠っている。 文才なんてない、思い付いた物語をつらつらと書くことで満足してしまうという、中途半端さは、喉に引っ掛かった魚の小骨ような不快感が残るだけだった。 今も、昔も、俺は中途半端なんだろう。 もし、テレビのニュースで報道される、事件や事故の被害者や当事者になれたらなんて幻想を抱くことがあっても、ありえないと否定するしかない、うつうつとした気分や燻り続ける気持ちを、無理矢理、飲み込み、小型冷蔵庫の扉を開き。 「……ゲッ」 からっぽの冷蔵庫に、思わず呻く。 「買い出しにいくか」 ボリボリと、頭を掻き、ちゃぶ台に広げた、原稿用紙を片付けた。
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