白黒……

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一瞬の接吻、その一瞬で少女の口内に舌をねじ込み涎をなめとり口の中に含ませた、少女から生えた腕の力が抜ける、惚けた少女の表情は愛らしく、朱色に染まっていた。 ーーグシャ!!ーー 同時に、地面に落ちた、腹部に嫌な音がしたが、気にかけている余裕なんてない、逃げなくてはいけない、このままじゃ勝てない、たとえ、負けるとしてもこのまま喰い尽くされてしまうなんてごめんだ、足掻いて、足掻くしかない、一目散に両腕を動かし、地面を這いずり回り、少女から逃れる。 「妖怪、テケテケかよ」 下半身のないまま浮遊する妖怪が脳裏に浮かび上がったが、すぐに余計な思考は振り払う、少女はまだ追いついてこない、放心状態なんだろうが、その後が怖い、きっと、今、以上の地獄が待っている。 「ハッ!! ハッ!! ハッ!!」 後方から迫る恐怖に身がすくみ息が上がっても必死に腕を動かし、路地裏に入り込む、建物でもよかったが扉を開けるられるかわからないし、見つかった場合、袋小路だ、逃げ場がない。 路地裏なら、逃げられる可能性が少しでも高くするため、逃げられるかもわからないけれど、壁に寄りかかり、瞼をきつくとじて深呼吸する、ゆっくりと瞼を開き現状を把握して、冷や汗が流れた、叫び声があげないだけ、耐性がついたのかもしれない、薄皮一枚の奇跡も切れたらしい。 「…………ハハ」 自然と笑みがこぼれた、下半身が、完璧に引きちぎれていた。
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