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息を吐き、吸う、気分を落ち着ける、下半身が引きちぎれたことに嘆くことは無駄、むしろ、好都合と思うべきだ、下半身を捕食の最中は時間稼ぎになる、あの少女が見逃すわけがない。
「不幸中の幸いってやつか」
壁に背中を預けて、わかったことを頭で思い浮かべた。
まず、捕食方法、あれは捕食したい相手に衝撃を伝えることにある、きっと衝撃には強弱があり、ただ触れるより殴るほうが強く、その衝撃で肉とゴーレムの力を抉り出し喰らうのだろう、現に少女が俺の腹部を殴った場合は抉られ、俺が少女と唇を重ね合わせた時は抉られなかった、あと、もともとから少女にあった二本の腕でしか捕食はできない。
残り四本の腕は、少女から直接、生えているわけじゃない、肩と脇腹の辺りに装甲のような物があり、そこから生やしてるからだ、いや、造り出すが正しいだろう。
ゴーレムは、別名、泥人形、人間のなり損ない、新しく腕を造って操ることはできても、偽物の腕、生きてはいない。
「だったら、俺にだって、偽物の足が造れるはずだ」
少女が言っていたとうり、ゴーレムの力が創造と構造の力なら出来ないわけがない、口の中にある、少女の涎と俺の涎をゆっくりと混ぜ合わせ、咀嚼し飲み込み、二本の足のイメージを、想像を造り上げていき、引きちぎれた腹部から変化の兆しが見え始めた、瞬間だった。
「なんだ、これ?」
『それ』は、一つの感情だった。
「みーつけました、このゴキブリ野郎」
その感情を打ち砕くように、怒りに震える少女の声音が路地裏に響く。
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