白黒……

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『それ』は感情だった、次は、願望、切望、希望と移り変わっていく花が花びらを開花させて、ポトリ、ポトリと花弁を落とすように、頭の中で咲き乱れ、散っていく、次々と移り変わる『それ』は、目の前に迫る少女の…………。 カツン、カツンと足音が路地裏に響く。 少女が、一定の範囲で足を止めた、怒りに任せて襲いかかってこないだけの理性は残っているらしかった、肩と脇腹から造り出された、ゴーレムの腕がゆらゆらと不気味に揺れる、むしろ、理性を持ち合わせているほうが恐ろしく感じた、獣のように激昂するほうがまだ、納得できる。 「よう、ずいぶんと早かったじゃないか、俺の下半身はもう喰ったのか?」 「…………」 無言の冷笑が微かな恐怖を煽る、否が応でも向き合い、下半身を失い視線が低くなってしまったため、見上げるように少女を睨みつけると、何の前振りもなく、ゴーレムの腕が振るわれ、グシャッと俺の片手を殴打され、激痛に想像がかき乱される。 「選ばせてあげましょう、大人しく私に喰われるか、それとも、この腕で死にたい、喰いたいと言いたくなるまで殴られる、選ばせてあげます」 どっちを、選ぼうが待ってるのは地獄の苦しみ、前者は死ぬまでの時間が短く、後者は長く辛い、自分で選ばせようとするあたり、悪意を感じた。 「つまり、その四本の腕じゃ捕食できないって……」 無言のままゴーレムの腕が振るわれる、予測が確信に変わるが、詰問の内容、以外の返答は許さないらしい。
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