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痛い……、薄れゆく意識の中でそう思った。
あの女性は、いつのまにか居なくなっていた、俺が死んだと思って立ち去ったのかもしれない、その間に降り出した雨粒が容赦なく打ち付けていく。
「死ぬのか?」
打ち付けていた雨粒が、その一言と共に当たらなくなる。
地面に転がったまま、顔だけを動かす。
真っ黒い傘と喪服に身を包み、あどけない顔立ちの少女が見下ろしていた。
「みっともなく死ねのか? 生きたくないか?」
くるくると、傘を回し、俺に問い掛ける少女。
「はは……、死神のご登場かよ」
「僕は、ネクロマンシーのシィ、死霊術師さ、まぁ死神でも間違いじゃないけど」
ネクロマンシーのシィと名乗る少女のふわふわにウェーブした髪は、腰の辺りまで伸び、くりくりと大きな瞳が俺を覗き込む。
「助けてくれんの?」
「君が望むならね、でも、このまま生き残っても、これから先、死んだほうがましって思えるかもよ?」
突き放すような、シィの物言いに。
「死にたくない、死にたくないんだ」
見た目、10歳の少女に情けなく懇願していた。
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