例えば……

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そこには、ミィの綺麗でくびれた腹部と適度に締まった腹筋にへそなどなかった、目を背けたくても背けられない、身体は麻酔でピクリとも動かず、視線だけでもと思ったが、釘付けになって動かない、いや、動かせない。 「ダメだろう、それは……」 あまりにも陳腐な言葉だけ、吐き出して、無理矢理、視線を逸らす。 ダメだ、あんなのは、生きるとか、死ぬとか、死にそうだとか、生き残りそうだとか、そんな問答がくだらない言葉遊びになってしまう、そんな自身の往生際の悪さに吐き気さえした。 ダメだ、ダメなんだ、あれじゃ、あんな風になったら、生きられない、死ぬしかない、選択の余地もなく、即死してしまう、生きてたらダメだ、あんれは…… 「化物ですよね」 ミィは、なんて事もなく、自身の腹部、巨大な車輪か何かで引き裂かれた、もしくは、鈍重な鈍器でも叩きつけられでもしない限り、ありえない傷跡を見せつけ、もう一度、言った。 「はじめまして、貝塚訊さん、私はゾンビのミィです」
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