とある龍のつがいの話

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「ではな。わたしはもう帰る」 「えっ? ああ、今日が結婚記念日なわけか」 「そうだ。ではな。うらぶれていないで仕事を探すのだぞ」 「うるせーなさっさと行け」  可愛げのない子供だ。しかし今日のところは許してやろう。帰って妻をよろこばせなくては。  さきほど手に入れたばかりの、色とりどりの花。妻が生まれた地で咲いていた、妻の故郷の香りがする。  それを受け取った妻の顔を想像しながら、わたしは龍へ姿を変えて空へと舞い上がった。           ー完ー
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