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「おっしゃ!またとれた!」
くそ…なんで俺がこんな所に。
うるさいうるさいうるさい。
俺たちがきたのは
街一番大きいゲームセンター。
ゴウははしゃぎっぱなしで、さっきから連続で景品を取っていく。
「それ何に使うんだよ…」
ほとんどがぬいぐるみなのが気になる。
こいつ、ぬいぐるみ好きなのか?
「妹にやるんだよ」
笑顔でそう答えた。
しかしそれはどこか寂しそうな表情で。
「…ふーん」
それ以上は聞けなかった。
聞いてはいけない気がしたから。
「ふーっ!取れたとれた!」
両手に収まりきらないほどの景品。
店を出た後の人目が痛かった。
「一回、俺んち寄っていい?」
苦笑いで景品袋を少し持ち上げて聞いてきた。
邪魔だからおいていきたいのだろう。
「…ああ」
そう答えたあと、俺たちはゴウの家までほぼ無言で歩いた。
「じゃあ、少しまっててな!」
「ん。」
結構遠かったな…
などと考えながら携帯に目を落としたその時、またあの声が聞こえた。
『…まって』
誰だ…?
『お願い…まってよ』
俺に言ってるのか…?
「…だ、誰だ…?」
『ここだよ…ここ』
怖かった。なんとなくだけど、関わってはいけないような雰囲気だった。
でも…
「どこだ?誰だ?」
俺は知りたくなった。
細い細い声。消え入りそうな声。
それが何なのか。
なぜ俺なのか。
知りたくなったんだ。
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