越してきました

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「ふう、着いた。…凛、起きて」 「ふにゅぅ…」 車に揺られること丸一日…。 高速道路と一般道路を乗り継ぎ、ようやく目的地に辿り着いた。 あまりの走行距離に、僕はいつの間にか寝てしまったようだ。 「ここが、奥山町…」 「そうだよ。もう暗いからよく見えないけど、凄く景色のいいところなんだよー」 お父さんが車に積まれている荷物の入った段ボールを下ろしながら言う。 お父さんは丸一日運転していたのだから絶対僕より疲れている筈なのに、せっせと段ボールを運んでいる。 寝起きでぼーっとしていた僕は、お父さんの姿にハッとなる。 「ごめんお父さん!運ぶの手伝うよ!」 「あー、でも疲れてるでしょ?いいよ、やっとくから。もう布団の入った段ボールは運んだから、出して寝ていいよ」 「駄目だよ。お父さんの方が疲れてるし。それに僕がやりたいの」 「…そう。わかった。じゃあこの段ボール運んでくれるかな」 「うん、任せて!」 よたよたとよろめきつつ運ぶ僕の後ろ姿に、お父さんが「いい子すぎるな、うちの息子は…」なんて呟いてたなんて、僕は知らない。
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