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「――っ!!」
――走っている。おばあさんが。車に並走するように。
僕と目が合うと、そのおばあさんは嬉しそうにその顔を歪めた。
「お、お父さん!走ってる!おばあさんが!目が合っちゃった!」
僕が青ざめながら言えば、お父さんの顔色も変わったのがミラーごしに分かった。
「妖怪かい!?それは不味いな……凛、捕まってなさい」
お父さんはそう言うと車のスピードを上げた。
スピードが上がると、おばあさんは一瞬驚いた顔をしたが、すぐにまた間合いを詰めて追い掛けてくる。
「まだいる!お父さん!」
「くっ…凛!しっかり捕まって!」
ブォン、とお父さんは更にアクセルを踏んで、ハンドルを切る。
「わあぁ!!」
入ったのは道なき道。
ガタガタと揺れて、今にも放り出されそうだったけど、なんとか必死に座席にしがみついた。
ようやく揺れが収まったと思った時には、既に道なき道は抜けており、あの追い掛けていたおばあさんの姿もなかった。
「り…凛?…ま、まだいる?そのおばあさん……」
「…ううん、いないよ…。ごめんねお父さん……」
ぜえぜえと荒い呼吸をしながら、ハンドルを握るお父さんに、僕は凄く申し訳ない気持ちになった。
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