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黒くて長い車が校門の前に止まっており、学校に入ろうとする生徒を邪魔していた。
リムジンから数人の黒いスーツをきた人たちが現れ、後ろのドアを開ける。
――どきん。
リムジンから、スーツの男たちに手をとられながら現れた少女。
その少女の姿を見た途端、僕の心臓は大きくうねった。
腰のところまで延びる、黒くて長い髪。
頭には紫のカチューシャ。
瞳からは強い意思を感じる。
制服を美しく着こなす彼女。
僕は柄にもなくその彼女に身惚れていた。
「今日も凄いわねー、大道寺さん……」
「極道のお嬢だもの。これくらい当たり前じゃない?」
「そうだけど、いつみても凄いと思うわ……」
近くでこそこそと女生徒が話をしているのが分かった。
……そうか、極道の娘か…。
それなら、と僕も納得する。
僕はもう一度その娘を見た。
バチッ
「…!?」
目が合った。
するとその娘はにこりと綺麗に笑うと、すぐに目を反らし、すたすたと歩いて学校の中に入っていってしまった。
――これが、僕と彼女の、出会いであった。
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