第一章 千葉北警察署刑事

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   配属から二ヶ月。  酒口はある意味で、更にラッキーだったのかもしれない。  ドジで、交番を厄介払いされたようなもの。それがそのドジっぷりを、発揮する機会に恵まれなかったのだ。  言い方がおかしいかもしれないが、ようは二ヶ月の間。酒口が望むような、事件らしい事件は起きなかった。  数件の傷害事件と、万引きを含めた窃盗事件はあった。  捜査をしたり、犯人を追跡するような事はなく。現場に到着した時点で、事件はほぼ解決していたのだ。その結果、刑事課内で露見したのは酒口の方向音痴だけである。  そして、酒口が不謹慎な事を言い出した。 「北さん。何か、事件は起きませんかね」 「何だ、そりゃ」 「いえ、配属されて二ヶ月。刑事らしい仕事をしてないなぁって」 「おいっ、刑事らしい仕事って何だよ」 「聞き込みとか裏付け捜査とか、張り込みとか逮捕とか色々あるじゃないですか」
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