第三章 公開捜査

54/83
前へ
/378ページ
次へ
   それは、犯人側からアクションが無いからであろう。誘拐ではなく失踪や行方不明の、捜索中の親族の反応だったのかもしれない。 「目下、鋭意捜査中であります」  現場の責任者たる刑事が恭しく東山に言ったが、それは言い訳という名の逃げの言葉。それ程までに、捜査は難航している。それは、東山も感じていた。  だからこそ、言葉にしてしまった。  だからこそ、刑事はそうとしか答えられなかった。  真実は、どこにあるのか。警察関係者、マスコミ関係者、被害者の関係者。その全てが、真実を見失ってるのかもしれない。  錯綜する情報の中のガセネタ。  迷走する情報と人の考え。  そして、関係者は更なる混乱に落ちていった。  東山の、不倫関係発覚。圧力によって抑制されていた、マスコミの東山への取材攻勢。 「私は今、千葉県で起きている四つの誘拐事件の被害者。東山 一郎さんと、不倫関係にあります」
/378ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5553人が本棚に入れています
本棚に追加