5554人が本棚に入れています
本棚に追加
/378ページ
その為か、千葉北警察署管轄内でも殺人事件も発生している。
二ヶ月前、そこに意気揚々と現れた一人の巡査がいた。
酒口 孝也。
その男は、中途半端にパリッとアイロン掛けした紺色のスーツに真っ赤なネクタイ。一見、県警のキャリアのようにも見えなくないが。新卒の、新入社員を思わせる雰囲気を漂わせていた。
銀縁の眼鏡が、少し歪んで見える。
彼は、三流大学を卒業後警察学校を経て、二年の交番勤務の後。晴れて、千葉北警察署刑事課に配属された。
「失礼します。本日付で配属となりました、酒口 孝也と言います。よろしくお願いします」
「おっ、来たな? ラッキーボーイ、さかぐちたかや」
刑事課のデスクで酒口を出迎えたのは、酒口の父親よりは若そうな中年の男性刑事だった。
その口から「ラッキーボーイ」との発言。酒口は、それを歓迎の言葉と受け取り笑顔を浮かべた。実際は、皮肉である。
最初のコメントを投稿しよう!