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「アンタがいれば襲撃者を追えたのに!何してんのよ!」
「何って…トイレだよ。」
「違うわよ!そういうことじゃなくて、緊張感を持ちなさい!」
安達の控え室にてシノがケイトに不満をぶつけている。
「まあまあ、そう怒るなって。」
対するケイトに悪びれる様子はない。
安達本人はというと状況が飲み込めていないのか困惑した様子である。
「とりあえず、どちらでもいいから私に何があったのか説明してくれ。」
「えーっとですね…その…」
シノがどこから説明したらいいのか決めあぐねていると、
「安達さんが殺されかけた。それを我々が助けた。犯人は逃げた。つまりそういうことです。」
気づくと入口にエイタが立っていた。
「どこに行ってたの?」
「現場検証さ、おかげでいろいろ分かったぞ。」
エイタが取り出したのは10cmくらいの黒いビニールコードだ。
「これは?」
「安達さんの頭上から落ちて来た照明器のコードだ。ここ、見てくれ。」
ケイトとシノが顔を寄せる。
「コードがなんだってんだ。それより何で照明は止まったんだ?お前らの能力か?」
安達が誰にでもなく尋ねる。
「ええ、あれは僕の能力です。一般に"テレキネシス"と呼ばれるアレですよ。物体を手を触れずに動かせます。」
エイタが安達に説明する。
「ふん…エイタ君といったね。君は殺そうと思えば人を殺せるのだな。恐ろしいことだな。」
「それは違う!能力は殺人のためだけに使うものじゃない!」
これに反論したのは意外にもケイトだった。
「何が違うのだ?能力は凶器だ!しかもその使用に制限なんてない!無免許で車を運転してるようなものではないか!」
「それは断じて違う!人を殺すならそこらの包丁なりなんなりで刺すだけで殺せる。だがみんながみんな人を殺すわけではない。それと同じだ!」
こんなにムキになるケイトはコンビを組んで1年経つシノでも見たことがなかった。
「あ…悪かったな。熱くなっちまった。」
ケイトはシノのびっくりした顔を見て冷静さを取り戻した。
「いや…私も、熱くなってしまった。エイタ君には言い過ぎたよ。すまなかった。」
「いえ…そんな、僕は…」
安達はエイタに謝罪した。
「だがな、私は能力者が嫌いなのだ。それは絶対変わらない。」
そういう安達の顔には少し悲壮感が漂っていた。
やはり昔、能力絡みで何かあったのだろう。
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