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ケイトも昔あった事件のことを思い出していた。
ケイトの人生で一番の転機であり、一番辛い記憶。
「あのさ…俺実は…昔…」
だがその言葉は続かなかった。
ケイトの右足に鋭い痛みが走る。
バランスを崩して前のめりに倒れこむ。
「ど、どうした!?」
「いたた…大丈夫、転んだだけ…」
ケイトは言葉を失った。
右足が無いのだ。
膝から下がキレイに切断されていた。
断面からは血が噴き出す。
「やあ、安達さん。悪いが死んでもらうぜ。」
後ろから声がする。
振り返るとそこには男が1人立っていた。
(紺色の制服…警備員になりすましていたのか…)
男はゆっくりと帽子を取る。
20~30代の金髪の男だ。
「シノ!上だ!敵は上から…」
シノにそのことを伝えきる前に耳につけた無線機が破壊される。
今の無線機を壊した光の攻撃…
あれは完全にレーザーの能力だ。
「ちっ…安達さん。逃げてくれ。俺はここでコイツを止める。」
「だ、大丈夫なのか!?そんなに血が出ているじゃないか!」
安達はケイトの身を案じる。
「安達さん…確かに能力で人を殺すことだってできる。だが、能力で人を守ることだってできる。俺は後者であり続けたい。だからアンタは逃げてくれ。」
「…ああ、分かった。だが、絶対に生きて私を守り抜けよ。」
しぶしぶといった感じでそう言って安達は上の階へ駆け出した。
「上に逃げても追い詰められるだけなのにな…」
哀れむような顔で襲撃者は歩きだそうとする。
「おい、待てよ。お前は俺が止める。」
男は数m手前で止まりケイトを見下ろす。
「お前まで殺す気はない。さっさと止血でもしてろ。そうすれば生き残れるかもしれんぞ。」
男は冷ややかな視線を向ける。
「そうだな。まずは止血だな…」
そう言うなりケイトは傷口に手を当てる。
すぐさま傷口が氷に覆われだす。
「!?バカな!能力者は2人のはず!!」
やはり前回は偵察だったようだ。
「さらに…」
ケイトの右足があった場所に冷気が渦巻く。
荒削りではあるが足の形をした氷が出現する。
氷の義足の完成である。
「よし、これで戦える。あとは…」
落とされた右足を拾い上げるとそれもすぐさま氷漬けになる。
「よし、冷凍完了。まずは、名前を聞こうか?」
ケイトは改めて敵に向き直る。
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