氷+鏡+最強

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「シノ、俺…ちょっと疲れたわ。代わってくれ。」 「もちろん、アンタは休んでなさい。ここからは…私がやるわ。」 ズタボロのケイトに代わってシノが一歩前に出る。 鏡片がショウを威圧するように漂う。 シノ自身からも怒りに似た圧力を感じる。 ショウは始めから10本の指全てをシノに向ける。 10本のレーザーがシノに迫る。 だがそれは当然のようにシノには届かない。 鏡片に反射されショウに打ち返される。 「なっ!?」 ショウは咄嗟に避けたが数本が体を掠める。 「角度の計算って結構得意なのよ?」 シノは余裕の態度でショウへと歩みを進める。 シノが近づいてきているのにショウはなぜかレーザーを撃たない。 ケイトはショウの狙いが分かった。 ショウは能力者でも反応できない絶対射程圏に入るのを待っているのだ。 「お、おい、シノそれ以上進んだら…」 「分かってるわよ。分かった上で進んでるの。」 シノの声からは余裕の色が消えない。 シノの足がその範囲に踏み込む。 ショウが再び10本のレーザーを放つ。 しかしそのレーザーはシノを貫くことはなかった。 貫いたのはまた、ショウの体であった。 だが不思議なことに10本全部が1点に向かって反射した。 「ぐふっ!そんな…!なぜ反応できたんだ!!」 わき腹を貫かれたショウは床に膝をつく。 「簡単なことよ。見えない鏡で"凹面鏡"を作っていたのよ。急所は外したわ。」 凹面鏡で反射した光は1点に集まる性質がある。 その1点をわき腹に設定していたのだ。 「レーザー攻撃は無駄よ。諦めなさい。」 ショウは押し黙ったまま何かを考えている。 すると不意にニヤリと口の端を上げて楽しそうな顔をする。 その不気味さ…いや、その表情の意味が理解できない不安からかシノが数歩後ずさる。 「今が…"アレ"を使うときかもしれんな…」 ショウが口を開く。
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