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「………そうだろうと思ってここに来たんですよ」
「……ふむ」
灰崎さんは頷くと、顎に手をやって考え込むしぐさをした。
「あいつが出てってもう一年は経つんだが……その間なにもしなかったのは?」
「………」
唐突の質問に私は首を傾げる。
「もしも今、美空が実家に戻って隼人を連れ戻すつもりでいるのならやめとけ。一年も待ったんだから、あいつがしっかり帰ってこれる状況ができあがるまで待ってやるべきだ」
灰崎さんは諭すように言った。
「一年も待っといてあいつが帰ってくるのを待たずに連れ戻すつもりなら、それはなんか違うと思うなボクは」
「………そうですね」
そうだと思う。
ここまで待っといて急に連れ戻すのはあまりにも自分勝手すぎる。
でも。
でも、私だって言い分はある。
「………一年近く待ったのは隼人のことを信じてるからです。でも、連れ戻すのは私の勝手じゃないんですよ」
「……と、いうと?」
「………怒ってるんですよ私は。何も言わずに勝手に消えた隼人に。あのときずっと一緒にいるって約束したのに」
うん、怒ってる。
私は怒ってるんだ。
むしろ一年も我慢したことを褒めてほしいくらいに。
「………一年我慢したんじゃない。一年、覚悟する猶予をあげたんですよ私は」
「……うわーお」
なかなかにご立腹だー、と呟く灰崎さん。
えぇ、ご立腹です。
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