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「………ありがとねわざわざ」
「あ、いえ……」
後部座席で揺られながら私は安藤さんに声をかけた。
安藤さんはバックミラーでちらりと私を見る。
「乗り心地はどうですか」
「………うん、すごく良い」
「それはよかったです」
灰崎のやつはうるさいんですよ、なんてぼやく安藤さん。
たしかにあの人ならどうでもいいことに突っ込んできそうだ。
「………この、くまさんは……?」
「あ、それですか?ゲーセンで取ったんです。あげる人もいないんで車においてあるんですけど……」
「………灰崎さんは?」
「…………アレにぬいぐるみが似合うと思います?」
想像してみる。
あの人がぬいぐるみを抱きしめている姿……
「………ダメだこりゃ」
「でしょう?」
くくっと笑う。
猫とかはしっくりくるんだけど、あのシンプルな部屋で一人でぬいぐるみを抱きしめている姿とか……ぷふっ
「お嬢、いります?」
「………私はいいや。安藤さんの車にあるのもおもしろいし」
「ちょ、なんて理由ですか」
安藤さんが赤くなる。
でかいガタイとのギャップがあってなんか可愛い。
「………そろそろかな」
「そうですね。あと一分もかからないです」
山道を登り始めたころ、安藤さんとそんな話をする。
もう、つくんだなぁ……。
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