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キノコの事は、一旦頭の隅に追いやった。
すると、少しの間忘れていた昨日の記憶が蘇ってくる。
今考えれば、あまりにいきなりだったかもしれない。
昨日の放課後、教室で。
「お前の事、好きなんだ!」
俺は親友の朝霧(あさぎり)に告白した。
冗談じゃないけど、そうとも取れるノリで。
なんせ直前まではカップ麺に入れるお湯の量に対する熱い議論を交わしていた。
ちなみに俺は線より少し下までしか入れない派だ。
雰囲気も色気も何もあったもんじゃない。
「やめろよ、笑えねー」
半目で彼は吐き捨てる。
「えー、そんな事言わないでさー」
笑いながら俺はさらに近づいた。
「愛してるよー」
そして耳元で囁くように言う。
いつものノリで、笑えばいい。
俺もーとか返してくれれば嬉しい。
軽口と受け取ってくれて結構。
たった一言で俺は幸せになれる。
なれるのに。
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