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「おはよー」
先に教室にいた朝霧に声をかける。
……返事はない。
こちらに視線を向ける事もなく、完璧なスルーっぷりだ。
ちょっと泣きたい。
「あ、夕川(ゆうかわ)おはよ」
近くにいたクラスメイトが挨拶してくれた。
心配するような顔をしているから、きっと無視される俺を見かねての事だろう。
「喧嘩でもした?」
こそっと、朝霧には聞こえないようにそう尋ねられたのが何よりの証拠。
「まあ、そんな感じ」
返事をしながら机に頬杖をついて、朝霧を見つめる。
いくら熱い視線を送ったって一割も返してくれない。
いつもなら、なんか用か?って振り返るから気づいてるはずなのに。
1回だけでもいいのに。
ずっとずっと彼だけを見つめていると、いつの間にか午前の授業は終わっていた。
我ながら、うわの空って次元じゃないと思う。
よく先生に怒られなかったもんだ。
そうしてやってきていた昼休みに、朝霧への接触をはかるため重い腰を上げた。
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