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「キノコ食べない?」
人気の無い北校舎の階段へと向かった朝霧の後を追いかけ、第一声がそれだ。
袖を掴んで、逃がさないようにしながらタッパーを突き出す。
流石に無視できなかったらしい彼は、タッパーと俺の首辺りを見比べた。
いまだ目を合わせてはくれない。
それでも踊り場から2段目に座って、諦めたようにため息を吐く。
「食うよ」
「よしっ!」
狙い通り。
キノコが好きすぎる彼は、俺の誘いを断れなかった!
2人で並んで弁当を食べる。
けれどいつものような会話もなく、
遠くの喧騒を聞きながら箸を口へと運び続けるだけだ。
さすがの俺も、話しかけても無視をされれば、5回目からは口をつぐむ。
ただジッと彼の方を見つめていれば、
自分の持ってきた弁当を食べきった彼がようやくキノコに手をつけようとしていた。
好きな物は最後にとっておくのが朝霧の癖だ。
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