3355人が本棚に入れています
本棚に追加
―― ローズクイーン号
―― 船首付近
春先とは言えウォッドアイランドはまだ冷える、肩掛けを纏って船首付近まで来ると最近では見慣れてしまった後ろ姿が目に入った。
歩み寄って行き、声をかけようとした時だ。
ベリアルが私の気配に気付いたのか振り返り、私は適度な距離で立ち止まった。
「あら、セレス」
「……何用だ?」
私の様子にベリアルは肩をすくめさせた。
「ウォッドアイランド沖の水質調査の為に3日後に船を出して欲しいの。 協力して貰えないかしら?」
「仕事か」
「ええ」
「ならば仕方があるまい。 小船を1艘(ソウ)を貸そう」
いくらベリアルを嫌いだとは言え協力や助力くらいはするさ。
私も大人なのだし、嫌いだからと言って人成らず接し方をしては己の器を縮めてしまう。
私はクルー達の手本にならなければならないからな。
「ありがとう、助かるわ」
「構わん。 他に用は?」
「あぁ、そうだわ…あのね」
ベリアルは持っていたファイルから数枚の書類を取り出して私に差し出す。
「キュイラスにこの書類を貴女に渡しておいてって頼まれたの」
………………。
「キュイラス殿が?」
「えぇ」
最初のコメントを投稿しよう!