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なんでも卒なくこなすアレウスに複雑になりながら私達は家の中へ移動し、食事を始めた。
あ、例のお父さんの椅子は圧倒的存在感でアレウスは未だにお父さんの椅子に座れていない。
「そう言えば随分と綺麗になったな」
「うん、アレウスが屋根の修理とかしてる間にコツコツとね」
初めて来た時に比べ、生活感が漂う室内を見渡し、サンドイッチを頬張りながらアレウスが満足そうにしてくれた。
ちょっとずつだけど片付けてて良かった。
「ん、こう言う生活って良いよなァ。 自給自足っての? 憧れてたんだよ」
「え、どうして? RIVIROでの生活は?」
「俺の予定じゃあんなに殺伐な生活になるはずじゃなかったんだ」
食べていた手を止め、アレウスは窓の外に視線を向けた。
「なんつーんだろう。 ぶっちゃけ、最近は裏闇の帝王になるんじゃなかったってよく思うんだ」
「え…?」
アレウスの言葉に思わず食事をする手が止まってしまった。
「統制を持ってる時点で裏闇の帝王に即位するのは決定事項なんだがよ。 もっと…もっと普通の道が良かった」
それは悔やむとかじゃなく、まるで過去の誤ちを思い出しながらそれに浸っているような感じ。
穏やかともとれるアレウスの様子に、何故か胸がチクリと痛んだ。
「かと言ってRIVIROでの生活は嫌じゃないし、むしろ好きだぜ。 ただ…表の人間として生まれ、裏や能力とか…知らずに生きていたらもっと気楽に生きていられたんだろうなってよ」
そうだよね。
裏を知ってしまったら表とは違った胸の痛みを知る事になる。
表では決してない、命を奪う行為をしなければならない可能性が跳ね上がってしまう。
今はそんな殺伐とした生活から離れているから余計にそんな事を考えちゃうんだろうね。
「RIVIROに戻っても"ここ"があるよ。 アレウスは忙しいから時間はあまりとれないだろうけど、のんびりしたいならまた"ここ"に来ようよ、ね?」
「…そうだな。 今度来る時は家族で」
「うん。 家族で」
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