●第39話

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  「流石は楓さん。 他の脳味噌がプリンな方々と比べて常識的ですねぇ」 声を潜める私にジンさんは満足そうに言うと、セレスさんに近づいて脈を測り始めた。 「…あの、ジンさん」 「なんですかぁ?」 「セレスさんの容体はどうなんですか?」 私がそう尋ねると溜め息のように鼻から息を逃がし、ジンさんはちらりと私を見た。 「少しばかり呼吸は浅いだけで問題はありません。 いつ目が覚めても良いレベルで」 そして、ジンさんは掛け布団を静かにまくるとセレスさんに寝返りをうたせるよう、作業を始めた。 (お医者さんならこんな作業絶対にしないのに…) 「天命の力を使って意識を取り戻そうとしたんですが、どぉ言うことだか目を覚まさないんですよねぇ」 「……まさか…脳死ってことは…」 フラッシュバックがおこる。 アレウスが目を覚まさなかったあの時…ジンさんから脳死判定を行うと告げられたあの時…。 「可能性は無きにしも非ず…ですかねぇ」 「! そんなっ…」 「だから楓さん」 セレスさんの向きを変え、タオルケットで固定し、掛け布団をきちんと掛けたジンさんは私に真っ直ぐ視線を向けた。 「また話し掛けてあげて下さい。 アレウス様の時のように」 「え? アレウスの時のようにですか?」 「えぇ、セレスさんにとってアナタは初めて"忠誠を誓った特別な方"です。 なんらかの反応はあるでしょう」 反応…私が話し掛けてどうにかなるなら、セレスさんが目を覚ましてくれるなら…。 「分かりました。 ジンさんがおっしゃるならきっとその方が良いんですよね」 「有り難うございます。 僕はちょっくらアレウス様のところへ行って来ますんでぇ」 いつの間にか口調を戻したジンさんは、面倒臭いと言わんばかりにドアの方へ歩き始めた。 「行ってらっしゃい、頑張って下さいね」 「はぁい、修羅場に行くなんてこの上なく嫌ですが行って来まぁす」 そう言ってジンさんは振り返ることなく、病室から出て行った。 私は数秒ほどドアを眺めた後、振り返ってこちら側を向いて横になるセレスさんを見た。 「……セレスさん…」 セレスさんに近付いて椅子を手繰り寄せ、側に座り綺麗な手を握る。 「セレスさん、えっと…何を話したら良いんだろう…」 いざセレスさんに話し掛けようとすると内容が出てこない。  
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