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「セレスさん、アレウスから聞いたんですがピッキング…上手らしいですね」
それはツリーハウスで知ったこと。
「ツリーハウスで開かずの間があって、アレウスが"セレス式ピッキング法"とか言って開けたんですよ。 なんでもセレスさんに教えて貰ったとか」
ふとセレスさんの顔を見ると、僅かな表情の変化すらなく、吐息の度に酸素マスクが曇るだけ。
「…開かずの間、父さんの書斎だったみたいで…」
セレスさんの顔を眺めていたら急に寂しくなってきた。
セレスさん…いつも私を気に掛けてくれ、護ってくれていた。
有事には私の前に立ってくれて、勇ましくも頼もしい背中を私は眺めていた。
そんなセレスさんが…あの時のアレウスと同じ状況だなんて。
私は………私は…。
「セレスさん…」
私は握り返す素振りすら見せない、私自身が握っているセレスさんの手に額を寄せた。
「私にお姉さんがいたらセレスさんみたいな人がいい…目を覚ましてくれなきゃ寂しいですよ、セレスさん」
悲しくて。
寂しくて。
そんな感情が湧き出てしまい、私はそのまま瞳を閉じた。
額に触れるセレスさんの手の温もりが、そんな感情を少し和らげてくれるから。
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